主に未成年を対象に内科全般を幅広く診療していくのが小児科ですが、当院では主に中学生くらいまでのお子さんを対象としています(高校生以上の患者様は一般内科で診療します)。
当診療科では、発熱、鼻水・鼻づまり、咳(ぜんそく)、喉の痛み、腹痛、便秘、嘔吐、下痢、夜尿症(おねしょ)、ひきつけ(痙攣)といった症状がみられたことで保護者(ご家族)の方と共に来院されることが多いです。ただ、原因がわからないものの、いつもと様子が違う、言葉で訴えているわけではないが、しきりに特定の部位を触っているなど何かおかしいという場合は、一切遠慮することなく、お気軽にご受診ください。
熱がある場合は、ご来院前にお電話を
とくに小さなお子さんは、自分の言葉で症状を説明するのは大変困難です。そのため、診察時はより医師が注意深く診察をしていきますが、保護者の方にもお話(いつから症状の悪い状態が続いているか)を聞くなどご協力いただくこともあります。その際に症状を言葉で説明するのが難しいという場合は、携帯電話(スマートフォン など)やデジタルカメラであらかじめ撮影し、このような症状があったという画像を医師に見せていただけますと、診断をつけやすくなることもあります。
また発熱がある場合は、来院前にお電話でご連絡ください。当院では、院内の患者様をできるだけ感染症のリスクにさらされないようにするための予防対策を行っています。受診方法につきましては、電話を受けたスタッフの指示に従うようにしてください。
小児によくみられる症状
小児科で取り扱う主な疾患
小児科でよくみる代表的な疾患
かぜ
身近な感染症としてよく知られている病気のひとつで、風邪症候群とも呼ばれます。原因の大半はウイルスとされていますが、そのウイルスは200種類以上(ラテノウイルス、RSウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス など)あると言われています。感染することで、鼻水・鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み、発熱、咳、痰などの症状がみられるようになります。なお、これらウイルスに対する特効薬はなく、強い症状があれば解熱剤や咳止めといった対症療法による治療が行われます。多くの場合、数日間安静にすることで治癒しますので、余程ひどい状態にならないと受診することはありませんが、これをこじらせると肺炎や気管支炎を引き起こすあることもあるので注意が必要です。心配な場合は、一度ご受診ください。
インフルエンザ
インフルエンザウイルスに感染することで発症する呼吸器感染症です。患者様からの飛沫あるいは接触感染によって発症します。感染力が非常に強いのも特徴です。感染後は1~2日の潜伏期間を経てから、いきなりの高熱(38℃以上)や寒気がみられるほか、鼻水、頭痛、喉の痛みなど風邪みたいな症状や関節痛といったものも見受けられるようになります。小児が感染すると肺炎やインフルエンザ脳症といった重度な病気を併発することもありますので注意が必要です。
治療は、抗インフルエンザ薬(タミフル など)を発症から48時間以内に使用すれば有効とされ、この場合は一両日中には熱が下がるなど、次第に症状が緩和されるようになります。なお、よくなったとしても発症から5日が経過するまでは自宅で安静にするようにしてください。
感染性胃腸炎
ウイルスや細菌(サルモネラ菌、カンピロバクター 等)、寄生虫(アメーバ 等)などが感染源となって引き起こす胃腸炎を感染性胃腸炎と言います。なかでもウイルスによるもので、その中でもノロウイルスやロタウイルスがよく見受けられます。主な症状は、腹痛、下痢、嘔吐・吐き気、発熱といったものです。
ロタウイルスによる感染性胃腸炎は、乳児や幼児が罹患しやすく、激しい嘔吐や下痢が特徴です。下痢に関しては米を研いだ際に出る白濁色した便がみられるほか、発熱が出ることもあります。一方のノロウイルスは、小児だけでなく成人にもよくみられますが、同ウイルスに感染した患者様が触ったドアノブやタオル、あるいは吐しゃ物や便を介して感染するとされ、激しい下痢や嘔吐、腹痛などの症状が数日程度続きます。
治療ですが、どちらのウイルスについても特効薬というものはありません。下痢や嘔吐によって脱水症状になりやすくなっているので、経口補水液による対症療法を行います。下痢止めは使いません。
はしか(麻疹)
麻疹ウイルスに感染することで発症します。感染力が非常に強いのが特徴で、感染経路は主に飛沫感染や空気感染です。潜伏期間が10~12日程度とされ、最初に38~39℃の高熱や風邪の症状(鼻水、咳、のどの痛み 等)がみられ、3日程度経過すると全身に赤い発疹が全身に現れるようになります(口の中では小さな白い斑点(コブリック斑)がみられる)。6歳くらいまでの子どもに罹りやすいと言われています。重症化すると肺炎、脳炎、中耳炎などを併発することもあります。
そのため麻疹は、小児の定期予防接種のひとつで、1歳を過ぎる頃にMRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)の接種が開始されるので受けるようにしてください(接種回数は計2回。2回目は小学校に上がる前の1年の間に受ける)。なお同ワクチンを接種しないと、麻疹に罹患してしまうことが大半です。
治療に関してですが、特効薬というものはなく、対症療法としては、解熱剤や咳止めが用いられるようになります。このほか重度の合併症に罹患しないように抗菌薬を使用することもあります。
風疹
風疹ウイルスによって感染し、感染経路は飛沫感染や接触感染と言われています。幼児~学童期の子どもに発症しやすいとされますが、感染しても症状が出ることがないまま治ってしまうことがあります。これを不顕性感染というのですが、風疹患者様の3割程度がこれに当たると言われています。
感染後は、2~3週間の潜伏期間を経てから発症し、38℃程度の発熱と一緒に赤い発疹(かゆみがあることも)が顔や首から発生するほか、耳の後ろにあるリンパ節の腫れなどがみられます。ただこれらの症状というのは、これといった治療をしなくても3~4日で治ることから3日ばしかとも言われています。ちなみに治療をされる場合は対症療法(解熱剤 など)となります。
気をつけなければいけないのは、妊娠初期(妊娠20週くらいまで)の妊婦さんへの感染で、この時期に風疹に感染すると胎児にも感染し、これによって難聴、白内障、心臓の異常など先天性風疹症候群を持った赤ちゃんが生まれる可能性が高くなるので、風疹に罹患した子どもは妊婦さんにできるだけ近づけないようにもしていきます。
なお風疹も小児の定期予防接種に含まれており、現在はMRワクチンを計2回接種しています。ただ現在の接種回数になったのは、1990年4月2日以降に生まれた方です。それ以前は1回の接種、あるいは男性であれば1回も接種していない世代の方もいます。これらの方で将来的に妊娠を希望される女性、妊婦さんと同居されている方についてはMRワクチンを接種するようにしてください。